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研究フォーラム(パネル)食と農活動レポート

研究フォーラム(パネル)食と農 松阪農業公園ベルファーム調査見学

 「日本農業は持続可能か」

  9月2日(水)に「食をささえる農業のあり方を考えよう」と、研究フォーラム食と農の世話人会で、松阪農業公園ベルファームに行きました。三重大学名誉教授・ベルファームの大原興太郎氏から、ベルファームの成立ち、運営のご苦労、目指していることなどについてお聞きし、さらに「日本農業は持続可能か」をテーマにお話を聞かせていただきました。学びの多い見学会となりました。お話の概要を紹介します。

  ◆大原興太郎先生のお話◆
○ベルファームについて―1990年に地域の活性化をめざし松坂農業公園整備事業がスタートし、松阪市が100%出資して2004年に松坂農業公園ベルファームが開園しました。一旦できたものを活かそうと2006年秋に「株式会社松阪協働ファーム」を作り、2期目の管理者に指定されました。いかにコスト意識やお客さん本位の意識を職員に持ってもらうかで苦労しました。結果的に提案の内容で実績を上げることができ、今思えば奇跡でした。3つの「育て」―「食育」地産地消の推進と農業・地域産業への貢献、「緑育」環境活動、「健育」健康創り―の場をつくり、五感で感じられるようにしています。年間60万人近い方が訪れ、6億円弱の総売り上げです。直売所は、最初出荷の基準がはっきりしていませんでしたが、生産者の組織が発足し、かなり質を上げてきました。手数料を還元し、地域を元気にする役割が果たせているかなと思います。野菜ソムリエが常駐しています。生産者の農家は高齢化がすすみ、平均年齢が70才くらいで、若手の育成が課題です。

  ○「日本農業は持続可能か」について
食も農業も、地域の在り様も、この半世紀で大きく変わって今があります。地域の農業をどう再構築していくのか、まずは底流に流れる大きな変化について考える必要があります。世界との競争にさらされ農業をやり続ける人もいなくなってきています。
1.生活者としてともに―生活者、消費者として、農業にどう関わるのかが生協運動の課題になると思います。購買行動は一つの投票行動として誰もしていますが、地域のものを可能な限り買おうとすれば、地域の農業を支えます。それが大事です。消費者も生産者も、ともに考えていかないと、産物が単にモノとして評価されます。「ようけいあったらええ」だけなら、海外から当然入ってきます。そうなると地域の農業はすたれてしまいます。それぞれの住む地域でどれだけコミットできるかが、地域の再生につながると思います。
2.日本の農業は今―ヨーロッパでは、規模が大きくても自分でできるだけやるのが農の基本になっています。だから家族農業がかなり強くなっています。日本では、農地面積がかなり減っていますが、食料がなくなるという意識はありません。自給率は、イギリスとかスイスより低く、世界の人口が増えて食料が足らなくなるといった事態もあるかと思います。日本の地域は70年代、80年代に都市化が進み、どんどんすたれてきました。昔のようなことができなくなり、それに気づいて、立てて直そうとしている地域が生まれてきています。ここの直売所の生産者も大部分は定年退職、兼業の経験をうまく使って新しく農業をやっている方が増えています。それと新しく若い人が育ちつつあります。

  3.地域が支える農業へ―生協が目指すとよいと思うのは、農業者が支える農業から、市民が、地域が支える農業、CSA(Community Suported Agriculture)です。金沢の農業は金沢県民が支えるという条例ができました。農業者だけでは農業は守りきれなくなっています。農業の在り方を国民が支え、地域が支える農業といった方向性へと変わっていかないといけないと思います。そうはいっても農業だけで食べていけないので半農半Xですすめます。兼業や、年金をもらっての農業だったり、また、6次産業で農林水産品の1次産業のものを活かそうとしたりしています。そして直売所は、地域のものを地域で活かすフードマイレージを意識しています。農村でも面倒くさいことを誰かがやると人のつながりが一気にできてきます。地域地域にネットワークができると新しい地域社会ができます。
4.具体的なことでの議論を―「無農薬頑張ってよ、買い支えるわ」と言ったり、「輸入物の方が安くていいわ」となる時もあって、方向性がある人とない人の差があります。便利になってお金持ちになった時、それまで自給していたものを、お金を払ってやってもらうようになりました。今後、経済はよくならないと思います。お金を払ってやってきたものを、どう取り戻して豊かになるかが問題です。高度成長の意識を引きずっていると、暗い未来しかありません。しかし、ええことばかり言っていても事業が回らないようなら成り立ちません。そこのバランスだと思います。あらためて、具体的なことで、考え議論をたたかわせていかないといけないと思います。

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